そもそも「発泡現象」ってなに?
A.耐火材には通気性がある!
- 低圧鋳造用保持炉の加圧室は密閉構造であります。炉内の通気性を有する全ての炉材(溶湯バス材・断熱材)は、加圧時に加圧気体が侵入し、炉圧同等圧力で素材内に滞留します。
- バス材であるハイアルミナキャスタブルや黒鉛坩堝材は、緻密で気孔があり、侵入した加圧気体は入りにくく出にくい性質があります。
- 加圧終了時に炉内圧が大気圧へ解放されたとき、差圧によって気孔に閉じ込められた加圧気体が、断熱材側と溶湯中へ解放されます。溶湯中へ解放された加圧気体は気泡と成り、鋳造時の湯回り不良及び、気泡により生成された酸化物によって鋳造欠陥を引き起こしています。
- この発泡現象は、溶湯バス材の経年劣化により気孔が増し、ごく低圧でも大気解放時に気泡が発生するように成ります。
従来型と次世代型の
発泡比較動画
炉圧を1気圧まで加圧し、1分間保持したのち、
解放したときの発泡状況
従来型
(製缶ケース内全体加圧)
次世代型
(キャスタブル管内のみ加圧)
従来型の発泡現象に起因する不具合
ストーク内への気泡侵入
炉床部での発泡現象は避けられず、発泡現象で生じた気泡がストーク内に侵入して、湯回り不良の鋳造不良を起こす。
酸化物の多量発生
加圧室内に多量の酸化物が堆積し、湯⾯センサーの誤検知が⽣じて安定した鋳造が困難となる。
溶湯品質の早期低下
溶湯中への圧力気体の侵入量が多量であり、それだけ溶湯中での反応が多くなり溶湯品質の長期維持が困難となる。
次世代型内圧式低圧鋳造用保持炉の
6つのメリット
従来の低圧鋳造用保持炉と比較し、炉材から湯中に放出される発泡量を90%削減します。キャビティー内に入り込む浮遊酸化物の削減と気泡の撲滅により、湯回り不良等の鋳造不良を大幅に削減する事で、生産性の向上に繋げます。
生産性の向上
ストーク周りの発泡現象は皆無であり、湯面付近に僅かに残るのみ。湯中で発生する気泡による酸化物を大幅に削減し、ストーク内への気泡の侵入を回避する事で、湯回り不良の原因を減らし生産性向上を図ります。
CO2の削減
加圧気体である工場圧縮エアの使用量を50~80%削減(炉形によって異なる)出来、加圧気体の供給関連機器に関わる小型化と消費電力量の大幅な低減となります。
溶湯品質の劣化防止
溶湯バス材の長寿命化
発泡現象は溶湯劣化のみならず溶湯バス材の劣化も早めます。加圧気体使用量を大幅に削減する事により、溶湯バス材の結合剤が発泡現象によって放出される結合劣化を遅らせる事が出来、溶湯バス材の長寿命化を図れる事は勿論、湯中に溶け出す結合剤を減らす事は、溶湯品質の安定化が図れます。
加圧気体量、
放熱量の大幅削減
加圧気体の炉内滞留領域は、湯面上部のキャスタブル管のみであり、加圧気体の使用量を50~80%削減すると共に、鋳込み終了時の大気解放時は、炉によって加熱された高温加圧気体が持ち出す熱量を大幅に減らし、消費電力を抑えます。
酸化物生成量の低減
加圧気体の大幅な使用量削減により、加圧室内で発生する湯面酸化物量と湯中発泡現象に起因する酸化物生成量を低減します。
コストの削減
従来型と異なり、加圧室の本体製缶に加圧気体による圧力が懸からないため、製缶肉厚を減らすことが可能。さらにヒーター等機密構造部のシールも不要に成り、炉体価格の低減に繋げたいと考えています。
従来型と次世代型の違い
従来型と次世代型では、
発泡の発生箇所・加圧気体の使用量に違いがある!
従来型(製缶ケース内全体加圧)
製缶ケース内全体を昇圧する為、大量に加圧気体が必要に成るとともに炉材に加圧気体が侵入。
侵入気体は、炉材の気孔に炉圧同等の圧力で滞留維持される。
加圧終了で大気圧へ解放されると維持された加圧気体が大気圧に戻ろうと遅れて炉材から出て来る。
その内の僅かは湯中へ発泡現象として現れ、気泡がストーク内へ侵入する。
次世代型(キャスタブル管内のみ加圧)
発泡現象の発生個所は湯面付近に僅かに発生するため、気泡がストーク内へ侵入する事はない。
キャスタブル管は、ファインセラミック管と比較して格段に安価で形状自由で大型化が容易である。